2012年7月9日月曜日

発表を聞いて2(フィンランドの英語教育と教員養成)



Sさんは、特別発表です。昨年から1年間フィンランドに留学していた際のことを話してもらいました。フィンランドの英語教育やその教員養成(特に教育実習)について特に調査してきました。発表はその一部です。Sさんとはこの4月にフィンランドで会って話をしました。その際に、とてもおもしろい体験をしていることを知り、この授業にも特別参加してもらいました。

フィンランドの教育は日本でも注目されています。確かに成果をあげていて、日本の教師からするとかなり異なる環境の中で教えています。Sさんは、その教員養成課程の中でエスノグラフィーをしました。集めた資料はおそらく膨大でこれから整理してまとめるのでしょう。特に教育実習の観察調査は貴重だと思いました。すべて見た記述をしっかりとまとめておくとよいと思います。これから行なう日本での教育実習と較べると何か分かるような気がします。

Sさんの発表の中で、教員にとって大切な点に、distinctiveness(独自性)ということをあげていました。フィンランドの教師教育の特性を表していると思います。もちろん、これは教師に限ったことではありません。当たり前ですが、人と違うこと、個性は、とても大切です。しかし、日本の教育環境ではどうでしょうか?学校や学級などでは、協調性の重要性や他の人と同じ行動や意見を要求されることが多いかもしれません。個性を重視するあまりコミュニケーションが軽視されたりする場面もあります。そのあたりの社会と学校と個人の関係性が、日本ではまだ「閉じられている」という気がします。教師の「教え方」を考えてもそうです。人と同じように教える、だれかのまねをする、自分が教えられたように教える、という状況が多々あると思います。その点、distinctiveness(独自性)は大切です。しかし、その背景には、当然、ある前提条件(学習指導要領)があります。日本の大きな問題は、学習指導要領と現実の要求が、「あいまい」であることにあると、個人的には考えています。

もう一つ、Sさんの発表で、印象に残ったことがあります。「英語を通して教える」ということです。これはさりげなく言われるので、「それで?」となるかもしれませんが、私自身がフィンランドの英語授業を見ていて、いつも感じることです。もちろん、フィンランドでも英語の授業では英語を教えているわけですが、背後には「英語を通して教える」という意識があります。日本の場合、それよりも「英語を教える」という感覚が強いように思います。英語教師は、英語の語彙、文法、統語、文化、コミュニケーションなどなどを教えるということです。「英語を通して教える」を別の言い方をすると、「英語はツール」であるということです。英語自体に何か目標があるわけではありません。もちろん英語という言語を研究の対象とする人には別ですが、多くの生徒は違います。英語は彼らが社会に出たときに必要なツールなのです。

Sさんはどう思ったか分かりませんが、私はフィンランドの外国語教師の授業をすごいとは思いません。日本の教師の方が教え方が上手な人はたくさんいるのではないかと思います。しかし、フィンランドの教師のよいところは、教えることに自信を持って教えているということです。人と違って当然。授業はテクニックではなく、その教師の姿勢と哲学で、まさにその人自身の生き方の問題です。教師は忙しい仕事ですが、まず楽しまなくてはいけないと、フィンランドの教師を見ていると思います。先生が楽しんでいなければ、生徒は楽しくないでしょう。先生がいい加減にやっていれば、生徒もいい加減になります。

フィンランドは、日本よりは教育にお金をかけて、力を入れています。日本はお金をかけずに、効率よく行ない、成果をあげてきました。少しフィンランドを見倣うほうがよいと思っています。Sさんの発表は、フィンランドの教育全体の説明で、話足りない点もあったようです。1年間の知識と経験は貴重ですから整理しておくとよいでしょう。また、これをきっかけにフィンランドを徹底的に研究していくとよいでしょうね。期待したいです。

私もフィンランドの外国語教師認知には興味を持って研究しています。何故かというと、フィランドの外国語教師の考え方や実践を見ていると、日本の英語教師の考え方や実践に「特異な」思い込みがあるということが見えてくるからです。人は違うのは当たり前ですが、その違いを違いのまま受け入れることが、distinctiveness(独自性)なのですが、日本ではどうもそのことが機能していないように思います。distinctiveness(独自性)を強調し過ぎて「独りよがり(ego)」になったり、distinctiveness(独自性)を消すことで、同僚と同じように同じことを大過なくこなすというようになったり、バランスがうまくいっていないように感じます。このバランスを教師が持つことで、生徒もバランスを保てるのではないか。

教師は忙しいと言われます。ちょっと考えてみて、仕事を整理したらどうでしょうか?フィンランドを見ているとそう思います。Sさんありがとう。

乱筆乱文です。間違いや勘違いやご容赦ください。






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