2012年7月9日月曜日

発表を聞いて1(教職員の国際交流プログラム)


K1さんの発表は、教職員の国際交流プログラムについてでした。自身でも高校生の頃から国際交流活動に参加してきて、実践に根ざした発表でした。調査方法は、ある国際交流団体の職員の方へのインタビューとその現場でのエスノグラフィー的な介入調査です。私はこのような調査はとてもおもしろいと思っています。特に教師には必要な調査方法だとずっと思っていますが、調査方法としては、客観性に欠けるので問題も多々含んでいます。集めるデータの記録とその分析方法に注意を払い、「調査者である私」を意識して、問題を考える訳です。「調査者である私」は、この場合とても重要で、それを排除すると調査の意味もなくなってしまうかもしれません。「調査者である私」の変化も重要で、調査対象の変化も重要です。K1さんは、今回の調査にそのような視点から取り組んだと考えられます。

前置きはそのくらいにして、発表内容の国際交流についてです。国際交流は教育活動では柱の一つです。文部科学省でもそれを推進しています。次のウェブを見てください。


文部科学省の国際交流の推進

それによれば、教職員・学者・専門家の派遣・受入れの実施率は100%超の成果をあげているそうです。しかし、K1さんの調査によれば、中国での教員による交流活動が持続的であるにもかかわらず、かなり制限された表面的な交流に終始している可能性が示唆されています。この指摘はとても重要な指摘です。この分析の背景には、K1さん自身の実践が土台にあります。K1さんは、結論として、交流に重要なのは、「人間理解」「人と人とのつながり」と言いました。単に伝統文化の紹介や語学学習やイベントとしての交流だけではなく、個人と個人がどうつながるか、そのつながりをどう意識するかということだと思います。これは、まったくその通りだと思いました。

文科省の国際交流の推進における調査では、おそらくそういうことはまったく数値としては考慮されていないようです。もちろん、参加している人は「つながり」を意識して、貴重な体験をしているでしょう。しかし、プログラム自体が硬直化した内容になっている可能性も否定できません。その点からK1さんの指摘は重要だと思います。

それとともに、K1さんの発表でとても興味深かったのは、K1さん自身が「人とのつながり」をいつも大切にしている姿勢です。言語教師認知の研究は、ただ教師を調査研究することではなく、調査研究する人自身の「自己の探求」にあります。K1さんはそれを実践していることが、まさに言語教師認知の研究だと思いました。英語では「国際交流」という意味を表現しにくいです。英語による近い概念は、intercultural communication(文化間コミュニケーション)になると思います。international exchangeと訳しても意図は伝わりににくいでしょう。

K1さんが教師になるかどうかは分かりませんが、おそらく国際交流の活動をずっと何らかの形で続けると思います。言語教師認知の観点から言うと、やはりその際の「ことば」の問題、「ことば」の教育の問題を考えていただきたいと思います。その際には、英語はかなり重要なツールとなります。「交流のための英語」「英語からさらに互いのことばへ」という言語教育が必要なのではないかと思います。この役を担うのは、やはり現在の英語教師ではないでしょうか。

そんなことを考えました。発表ありがとう。
乱筆乱文です。間違いや勘違いやご容赦ください。

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