2014年6月29日日曜日

第3回発表会

Mさんの各国の英語学習状況調査

Mさんがアメリカでいっしょに英語を学んだ友人へ、social networksを通じて連絡をとり、それぞれの国の英語教育事情、学校教育、教師などについて、質問した。このような調査は、アンケート調査ですが、調査対象者が親しい人で、どのような人かも分かるので、率直に聞きやすいし、本音も言ってくれるだろう。1回だけではなく、一度回答してもらった質問にさらに知りたいことを追加することも容易だろう。おもしろい調査である。

発表はとりあえず、9カ国の友人に連絡を取った結果です。まだ一通りの質問と回答についての概要で、調査のポイントがどこにあるのかがまだ定まっていないのですが、面白い回答がたくさんあったと思います。主に、南米とヨーロッパとアジアという地域に分けられる調査です。それぞれの地域の教育的背景を把握するのはけっこうたいへんですが、この機会に知ることは大切で、貴重ですから、ある程度調査してみましょう。しかし、大きく調査するよりも、Mさんの調査は、アメリカのある地域である目的のために集まった人の調査です。それぞれの背景が違うのに、同じ環境で学んだという共通項があります。その点に焦点を当てるとよいと思います。

私が興味を持ったことは、特に英語教育や英語を教える教師です。意外に共通意識を持っている可能性があると思いました。それがNative Speaker教師への意識です。調査によれば、多くの人がNative Speakerから教わりたいと思っているようです。なぜそう思うのかということが知りたい。私が思うには、実際はアメリカにいても英語を使う際は留学生同士のコミュニケーションの場面です。その中で英語力や文化力を身につけていると思います。もちろん留学してそこで生活することから多くのことを学ぶでしょう。

それとともに、Mさん自身の体験も重ねることができます。この授業は教師の研究に焦点を当てているので、それぞれの人が抱く英語学習と英語授業とそれにかかわる教師に焦点を当てて、アンケートの回答を分析するとよいと思います。

ただ、これは私の興味ですから、Mさんの興味ではありません。MさんはMさん自身のために探求することが大切です。

Iさんの教師への聞き取り(インタビュー)調査 ー「模範的」ということに関する意識

Iさんは母校の先生にインタビューしました。いろいろと多くの質問をして、たぶんおもしろい話をしたのだと思います。このような聞き取り調査は、Mさんとはちょっと違いますが、面と向かって直接聞くということは多くのことを学びます。教師という仕事の一端が分かるでしょう。それもIさんの興味で質問していることが重要です。

Iさんの興味は、「教師は模範的ある必要がある」という前提にあるようです。確かに、教師はただ英語だけを教えるわけではありません。いろいろな仕事があり、ある程度模範的である必要があります。これについては私はたいへん興味がありますが、ここではやめておきます。Iさんも指摘していたように、「模範的」という意味が大切です。定義を定めるのはむずかしいですが、それぞれの教師が「模範的」という意味を実践の場でどう理解しているかが重要です。

模範というは、教師としてというよりも、「一般の市民、大人として」、ということですが、これも「一般の市民、大人として」ということの意味の受け取り方の問題があります。英語教師という枠組みでは、英語教師としての「一般の市民、大人として」というのはどういうことか?これはおそらく人により違います。話を聞いていて、この点に焦点をしぼると面白いと個人的には思いました。ただ調査対象者が少ないという点からすると、違うアプローチがあるでしょう。

この調査では、徹底的に一人の教師に焦点を当ててみるとよいと思います。対象とした先生が熱心な先生ということなので、その熱心さを支える信条・信念をもう少し探求し、それからさらに「模範的」という意味を深く聞いてみてもよいでしょう。教師の仕事は複雑です。「模範」として生徒に示す要素を様々です。たとえば、「英語を話す」ということをとっても、どのように模範となるべきかは少しずつ人により違います、しかし、その中に特徴的なことが見えるはずです。そこにIさん自身の考察を、背景的知識から加えていく、というようなまとめ方もあります。ただ、結論を急がずに、「模範的」という意味を考える機会としてみることは重要です。

Hさんの高校英語教育と英語教師

学習指導要領やこれまでの英語教育の変遷など、よく勉強していると思います。テーマがとても大きいので、この授業の中ではまとめきれないでしょう。しかし、経験豊かな高校の英語教師を調査することはたいへん興味深いことです。それも、Iさんと同じで、かなり突っ込んでいろいろな質問ができそうだということと、調査対象者の背景が分かっているということが、調査しやすいということにつながるでしょう。

高校の英語授業も多様です。一口に高校の英語教育を語ることは、教師研究という観点からは、かなり長くかかる重たいテーマで、そう簡単には行きません。それよりも、ごく一部の教師でもよいから、本音やその人たちの信条・信念・ビリーフ(考え方)を、このような実際に教える問題と関連させて、その変遷・経緯を詳しく探求すると、日本の英語教師の現実が見えてくるように思います。

たとえば、「英語の授業を英語でする」ということが、なぜうまくいかないのか、あるいは、本当にうまくいっていないのか、あるいは、実態はどうなっているのか、などを、個人のレベルから理解することで、何かが見えるかもしれません。本などの知識では、ある程度の傾向が言われています。調査統計データもあります。また、様々に意見があります。しかし、実態はだれも知らないのが、教育の分野です。

教師研究は、教師がする研究で、自分が研究することで自分が成長すること、と私は定義しています。そのためには、Hさん自身のためになることが重要です。今日の発表では、Hさんが知りたいことが、かなり入っていました。しかし、それをすべてこの授業の中ではできません。何かに焦点をしぼりましょう。

私が思うには、インタビューした経験豊かな教師のヒストリーを英語教育政策などと重ねあわせてまとめることです。何か結論を出す必要はありません。

だらだらと、私の個人的な意見を書きました。しかし、それは単に私の意見です。それに従う必要はありません。みなさん自身が知りたいことを、またみなさん自身が考えたいことを追求しましょう。誤字脱字はごめんなさい。

2014年6月22日日曜日

第2回発表会

Hさんの発表 学校外英語教育

タイトルが大きく、かなり広い範囲をカバーするトピックですが、あまり英語教育の中では話題にならない領域です。が、学校外の英語教育は、英会話や進学のための塾や予備校のことで、Hさんが調査したいのは、そのような場所で教える英語教師ということだと思います。いわゆる公教育としての小学校から高校までの学習指導要領に則った教育課程のもとで提供されている英語教育は、それに携わる教育職員免許状を持った教師によって行われます。それに対比した英語教育に携わる教師を調査しようという趣旨です。

私はとてもおもしろいと思います。まずは、ベースになる実態がどうなっているかということになると、かなり複雑で、すべてをカバーすることはできないでしょう。この調査委では、ポイントをしぼることが大切です。

3人の人を対象に調査すると言っていました。私はそれで十分だと思います。ポイントは、

基礎調査

1)その人が関わっている状況(塾ならどういう塾か?その業界の現状など)を確認
2)その人の背景(どのような経歴で現在の仕事に携わっているのか?など)の確認
3)現状どのような英語教育を行っているのか確認
4)公教育とのかかわりの確認
5)英語教育に対する信条・信念
6)その他(性別、年齢、教育、海外経験など)

Hさんが知りたいこと

・・・・

聞いていて、私が知りたいことをいくつか書きます。参考にしてください。

英会話教室などの先生や私塾の先生などは、仕事でやっている人もいますが、かなり強い考え方を持って指導に携わっている人もいます。日本の息苦しい学校教育が嫌いで、あったり、何か嫌な体験をしたり、あるいは、海外での実体験から独自の教育をしたいなどという人もいます。そのような本音が聞けるとおもしろいと思います。

また、Hさんの塾体験を通じて考えていたことと、現実に塾や予備校で教えている先生の考えを、較べてみるのもおもしろいと思います。Hさんが持っている公教育の印象と塾で学んだ事などを率直にぶつけてみて、それぞれの先生がそれについてどう考えるかなどです。

あるいは、いま日本で進められているグローバル教育などの国に方針など、海外などで行われている教育など、広い意味で、どのような教育理念を持っているのか、などもおもしろそうです。

インタビューできるそれぞれの先生の考え方を視点を決めて調査すると、調査結果の意義を大きいでしょう。それとともに、自分自身の英語教育や学校外での英語教育についての考え方の参考にできることが大切です。つまり、自分の問題を解決できるようにそれぞれの先生と話しましょう。よい結果が出ると思います。

様々なこの調査の背景ですが、インターネット上にはかなり多くの塾教師のブログなどがあります。それも参考にするとよいでしょう。

Sさんの「外国人英語教師から見た日本の生徒」

おもしろい観点です。なんとなく「こんなふうに考えているのではないだろうか?」というような考えはあります。たとえば、Sさんも言っていたとおり、「日本の学習者はきちんと教室では静かに先生の話を聞いている(あるいはふりをしている)が、おしゃべりをする」「意見を言わない」「一人で行動するのではなく、まわりを見ながら行動する」などなど。

でも、たしかに、これについてまとまった文献というのは私はあまり知りません。おそらく教育学の方では、英語教育にかぎらずなんらかのかたちで、あると思います。英語教育(English as a Foreign Langauge)の中でも、Native speakerが書いた日本人学習者の研究のような論文を探すとかなりあるような気がします。

たとえば

Analysis of a Japanese Learner of English

Why are Japanese so bad at English?


しかし、これも文法や発音などの学習と関連するようなものが多く、教室文化や学習態度や学習行動を話題としたものは、あまり見つかりません。その意味からすると、ひょっとすると、それほど研究されていない領域かもしれません。

考えてみると、日本でも海外でも多くのNative speakerが日本人学習者に英語を教えています。日本でもJETプログラムが始まって、30年程度経ちます。かなり多くの人が、かなり異なる状況で英語教育に携わっています。多くの人がなんとなく受け止めていることが、あまり根拠のないことかもしれません。

言語教師認知の研究の観点からすると、Native speakerの考え方とnon-Native speakerの考え方は、信条・信念(beliefs)、教え方に関する知識(knowledge)、ある教育環境での思い込み(assumption)、そしてその際の実際の行動(behaviors)などは、やはり多少違うのではないかと思われます。しかし、その実態は分かりません。

Sさんは、まず、身近なNative speakerの先生に聞いてみました。その回答をベースに、もう少し詳しく聞いてみるとよいと思いました。また、他のNative speakerの人にも聞いて、さらに深く聞くとよいでしょう。その際に、その先生がふだんどのように教えているのか、ということと、実際にどう教えているのかを見ることが大切です。

Sさんの話を聞いていて、日本で教えているNative speakerと言われている先生にアンケート調査ができたらよいと思いました。大学から幼稚園までいろいろなところで教えているNative speakerの人に、どのようなバックグラウンドがあり、なぜ日本で教えているのか、日本の学習者についてどのような印象を持ち、何がよい点で、何が悪い点で、改善が必要な点は何か、あるいは、どのように教えているときに工夫しているか、さらには、日本の文化教育システムの問題点や課題などを、インタビュー調査の中から抽出して、統計処理ができるようにアンケート項目を作成して、各領域で50人程度集められればかなり立派な調査になると思います。

他にも方法はありますが、とりあえず、私は彼らがどのように日本人英語学習者と教育文化を捉えているのか知りたいと考えました。

今回は、できるかぎり、聞ける人から話を聞いて、その聞いたことから、research questionsができれば十分だろうと思います。そのためにはどのような文献があるのかを調べられるだけ調べてみましょう。

来週からはあまり時間がないかもしれないので、いろいろと話ができないかもしれませんが、HさんもSさんもおもしろいテーマだと思います。教師のことを知ることは、自分を知ることでもあり、学習者や教育や社会を知ることにつながります。一つの社会調査ですが、どのような社会に言っても役立つ知見が得られるでしょう。

また期待したいと思います。

あたふたと忙しく、文章を見直す暇がありません。誤字脱字などご容赦ください。







2014年6月17日火曜日

Kさんの沖縄の米軍基地と英語学習

Kさんは、沖縄が好きで何度も足を運んでいる内に、ちょっとしたきっかけで英語教育に興味を持ったということです。元々の興味は、多文化ということがテーマのようですが、この授業と関連させて、「英語教師」という視点で沖縄の英語学習と文化を見たということでしょう。

Kさんの物事を探求しようという姿勢は見習うべきものがあります。思い立ったらすぐに行動するというのは、なかなかできることではない。私も沖縄は好きな場所で、機会があれば学校を訪れたいと思うことが多々あったが、ついつい食べるほうに向いてしまいました。

「沖縄はアメリカに近い」という思い込みが、多くの人にあるのかもしれなません。それも歴史的には複雑な問題を抱えた近さです。台湾やシンガポールや香港やアジアの多くの地域と、沖縄をいっしょにすることは無茶かもしれませんが、沖縄はその戦争の被害のどこかに位置していて、いまだに文化的にも少し異質な要素を持っていると考えてもおかしくはないでしょう。沖縄の米軍基地の問題は、多くの人にとっては、「外の」問題となり、「外の」人は自分の問題としてはやはり考えられないので、意見を差し挟むのはやめる傾向にあります。

では、英語学習との関連から、この状況をどう見るかという視点は、興味深いです。それも英語教師がどう見ているのかという課題設定は、私としてはおもしろいと考えます。

基地が近くにあり、多くのアメリカ人がそこにいて、教育的には多少交流する機会が多い可能性があるという状況は、動機付けには肯定的に働くと思います。しかし、そこに、「地位協定(the Status of Forces Agreement)」というアメリカ優先の力が存在し、それに地元の人は苦々しい思いを持って生活してきました。仕事という恩恵があることも多く、生活する上では欠かせない状況です。

英語学習という面から、Kさんは、基地の影響を考えました。そこで、学校を訪ね、英語教師にインタビューしてみました。得られたものは現時点では少ないかもしれませんが、Kさんの思い込みと英語教師の反応が微妙に違い、かつ、さらに疑問が湧くという点が、このようなエスノグラフィー調査の醍醐味です。結論はすぐには得られないかもしれませんが、このような調査は、そのプロセスと自分自身の思考がとても大切です。早急に結論を出さず、分からない事は分からないとして、事実を積み重ねることが大切です。

私は、リサーチクエスチョンに設定した疑問を、可能なかぎり多くの人に聞くことから、かなり多くのことが分かるように思います。英語学習と基地は表面的には多くの面で関連がなさそうに見えますが、深い部分では関係していると思っています。人間の「こころ」は複雑ですから、「基地があって、仕事があって、問題があって、。。。」という環境の中で英語を学ぶ、あるいは、英語を教えるということは、他の地域の英語学習とはおそらく違うでしょう。表面的には、学習指導要領や受験などの目標で設定される英語学習とそれに従う英語教師の仕事は、ほぼ同じように見えますが、実はかなり違うと思います。これは、何も沖縄に限ることなく、日本全国の各学校やそれを取り巻く文化で異なります。

英語教師の「こころ」は複雑です。それを理解することは成長につながります。英語自体は言語であり、多くの人には「道具」です。しかし、英語の背景にある文化や思想や知識は、日本語や他の言語とは異なります。英語教師はそのようなことを理解しておく必要があると考えています。授業でも述べた通り、英語教師は「外国語教師」です。さらには、「言語教師」です。だからおもしろい仕事だと思います。

文化と言語は切っても切れない関係にあります。その点から「文化」ということを考えると、次の資料が参考になるかもしれません。

multi-                             多文化
pluri-    culture     複文化
inter-        文化間

Culture in language teaching

次回からはこんなに時間がかけられないので残念ですが、さらに楽しい発表を期待しましょう。

2014年6月12日木曜日

OさんのTotal Physical Responseについて

1 OさんのTotal Physical Responseについて

Total Physical Response はかなり知られた指導法の一つです。早期の外国語教育には効果的とされています。また、TPRは、1960年代に行動主義的な言語学習から認知的な言語学習へと揺れ動く言語学習指導法が注目を集めた頃に発表された指導法の一つです。その他の指導法と同様にある信奉者がいて、現在も熱心に追求されている方法です。

Oさんは、それを自身が経験していて取りあげて発表してくれました。自分を基準として指導法を考えることは、英語教師の研究としては重要な視点でよいと思います。注意しなければ行けない点は、このような調査探求をする場合、文献をある程度きちんと確認する必要があることです。

Total Physical Responseはインターネットでも紹介されているので、比較的調べやすいと思います。批判もされますが、ある程度の効果は示すので、部分的にうまく活用すると、小学校や中学校の英語授業ではうまくいきます。Total Physical Responseという指導法だけを追求するのではなく、いろいろな指導の一部で必要に応じて、「身体を使って英語を理解する」と考えれば、学習者の学習はかなり容易に進むはずです。

英語教師の研究という観点からTotal Physical Responseを考えると、教師が英語学習の際に、このような指導をどう考えているかには興味があります。つまり、教師にはいろいろなタイプがいるので、生徒といっしょに歌を歌ったり、身体を使ってする活動が好きな人とそうではない人がいると思います。

みなさんの中でも、実際に英語を教えるということを真剣に考えている人、教育実習を経験する(した)人、教育実習でも中学でする人と高校でする人などなど。背景が異なる人がこの指導を実際にどのように利用して授業をするかは、とても興味があります。

Look at me. I will show you some gestures. Please guess what I do.

などとして、何かしぐさをして、たとえば、バナナを食べるなど、生徒に当てさせる。

What food am I eating?       -- A banana.

あるいは、

I am doing something. Please see me and do as I do. Are you okay?  --- Okay.

I am walking.
I am jumping.
I am sitting on a chair.
I am singing.
I am sleeping.
....

など。
どう思いますか?口で説明したほうが早いでしょうか?

Oさんの話にみなさんから様々な反応がありました。人の発表を聞いて、ただ聞いただけでは、それでおしまいになるかもしれません。それに反応することで、

「おもいがけない発見がある」

これがこの授業のポイントです。みなさんは、何も疑問を持たなければ、何も学ばないでしょう。何か疑問を持てば、何か発見するはずです。発見すれば、探求したくなるはずです。

また、期待しましょう。