2013年6月23日日曜日

第2回発表を終えて

発表者が5人はやはりちょっと多かったかもしれませんが、しかたありません。発表者の方はそれぞれたいへん興味深いトピックで面白く聞かせてもらいました。議論する時間があればもっとよかったですが、それはみなさんの思考に任せましょう。私の感想をここに述べておきます。

3 K1くんの教育実習体験

K1くんは、教育実習で実によい体験をしたようです。教師になりたいという気持ちが増したでしょう。いい先生になると思うので、ぜひ先生になってほしいと思います。私が高校の教師になることを決意したのも教育実習でした。

日本の教育実習のしくみは実に曖昧で学校や現場教師の善意によって成り立っています。指導教師となる現場の教師によって、あるいは、学校によって、時期によって、変わります。最悪の経験をすることも人によってはあります。なんとか改善してもらいたいですが、たぶん変わりません。現場の先生方の意欲が支えています。実に日本的です。

K1くんは、何事にもよく準備し考える人のようです。授業も相当に考えて、自分なりの意思決定をして、教えたと思います。学んだことも多いでしょう。限られた期間なので、自分がどのような態度で実習に取り組むかがその後を決めると思います。その点、K1くんは、教えることの方法や内容よりも、生徒ととの関係性に重点を置いたようです。それがある面で成功して、とてもよい結果になったということでしょう。

生徒との授業でのやりとりが次第にうまくいくようになったことや、体育祭での受け持ちクラスでの体験は、決して偶然にそうなったわけではなく、K1くん自身が生徒ととの関係性を重視するといく姿勢が生み出したものでしょう。教師認知的に言うと、この関係性は重要です。特に、日本の学校教育では、多くの教師がそう考えています。学校文化がそうなっています。また、生徒もそれを期待します。K1くんはそれきちんとうまく実習したと思います。

英語を教えることについては、広く使われている指導内容や方法をまねたそうです。目の前の実際の生徒のことをよく考えてそうしたのでしょう。ここにも K1くんの人柄が表れています。自分の教え方の技量を試すということではなく、あえて生徒の事情を考慮したということです。これは教師としての自然な考えでしょう。授業をするということは、一方的ではよい結果を生みません。

最終的なレポートは、K1くんの教育実習の記録とリフレクションで十分です。できれば、感動のストーリーをそのまま物語として綴ってもらうとありがたいですね。

4 K2さんのIB(international baccalaureate)カリキュラムについて

K2さんも教育実習の話題です。K2さんはIBの認定を計画している高校に教育実習に行きました。発表時間が限られているので、実習体験のことはあまり話しませんでしたが、よい体験をしたと思います。自分が高校生のときの印象とは違った目で教職員の人を観察するよい機会だったでしょう。

IB(international baccalaureate)については興味ある人は調べてみてください。おもしろいです。関心のある人はIBの教師の研修を受けてみるとよいでしょう。いずれにしても、文部科学省の政策として進めています。東京都は国際都市ですから、学力向上とグローバル化を目標に、中高のカリキュラムの改善を図っているのでしょう。大変なのは学校現場であり、教師たちです。教師が自分たちで結局工夫しなければいけない状況だと思います。



理念的には、IBはとてもよいプログラムだと個人的には思いますが、導入しようとしている教師の人たちや生徒が負担とならないように配慮したほうがよいでしょう。K2さんの説明だと、学習指導要領にそった内容を1年間で学習し、あと2年でIBの内容を行うということです。ひょっとすると詰め込みになりそうな懸念があります。それでは本来のIBの理念を見失うような危険があります。

IBの目標は次のようになっています。


The International Baccalaureate aims to develop inquiring, knowledgeable and caring young people who help to create a better and more peaceful world through intercultural understanding and respect.
To this end the organization works with schools, governments and international organizations to develop challenging programmes of international education and rigorous assessment.
These programmes encourage students across the world to become active, compassionate and lifelong learners who understand that other people, with their differences, can also be right.

英語力の向上や海外の大学に行くことだけが目標ではありません。しかし、日本でIBを高校から導入するとなると、やはりそれなりの工夫が必要になります。そのあたりは、私にはよく分からないので、K2さんがもう少し探求して調査してもらえるとありがたいです。

5K3くんの教育実習体験

K3くんも教育実習の経験をもとにした話でした。K3くんの教育実習経験の特徴は、英語ではなく、社会という科目での体験でした。K1くんともK2さんとも違う体験です。データとしては、好きな科目と嫌いな科目について提供してくれました。英語は「できる、できない」がはっきりしてくる科目です。特に中学ではその傾向が強くなります。その大きな要因が教師です。科目の好き嫌いは、教師のパーソナリティや人間性などに大きく左右されます。

K3くんの話は、あまり準備されていなかったかもしれませんが、興味深く聞きました。特に、K3 くんの人柄です。生徒にはかなりのインパクトを与えたのではないかと思います。また、教師としての情熱です。K1くんも同様でしたが、教育実習でも生徒との関係を大切にし、生徒一人ひとりとのコミュニケーションを重視しました。たとえば、休み時間にも教室に居て生徒とかかわるという姿勢です。その基本にあるのが、書物にばかり頼るのではなく、まず行動という考え方です。寺山修司が「書を捨てよ町へ出よう」と昔訴えました。一理あると思います。

情熱は人を動かします。教育にはもっとも大切な要素です。私は、K3くんやK1くんのような熱い人が教育の仕事に進んでいくことをありがたいと思います。問題は、その情熱がうまく機能するかどうかでしょう。いままでも多くの教師がそうしてきたし、いまでもそういう教師はたくさんいます。特にこの授業は、言語教師認知を話題にしています。その点からすると、言語教師として教育に対する情熱をどう生徒に向けるかということになります。さしあたっては、英語コミュニケーション能力をどう育成するかになります。K3くんにはそのことについてぜひ研究して考えてほしいと思います。

6 K4 くんの外国語学習について

K4くんは、外国語学習について興味を持ち、中国人の二人の友人を対象として調査した。中国の英語教育と彼らの日本語学習体験について尋ねた。日本で英語学習してきたK4くんはアメリカで短期留学して彼らと知り合ったそうだ。その際に彼らが英語と日本語ができることに興味を持ったのでしょう。質問は二人だけでもよいのですが、もう少し深く質問できるとよいと思いました。中国は大きな国で地域によって相当に違い、一概に把握できません。アメリカに行ったり、日本に来たりできるということはある程度豊かな家庭の人だと思います。

中国の学校で受けた英語教育も二人ともかなり違うようです。日本とある程度似ているかもしれませんが、クラスサイズやカリキュラムや教科書も調べる必要があるでしょう。中国の大学では、話によると(正確には私は知りませんが)、CET (College English Test)という試験があり、その試験に合格する必要があるそうです。英語ができる人もどんどん増えているように聞きますが、英語ができない人もたくさんいるようです。

二人の人は、熱心な日本語学習者でもあり、日本に興味を持っているようです。やはり動機付けということは学習には最も大切なのでしょう。実際に英語を使って何かをしようとか、日本語を使って何かをしようとか、という学習意欲と、それをサポートする教師の役割は重要です。そのあたりについて、K4くん自身の外国語学習経験と比較しながら分析して整理するとおもしろいと思いました。

また、音読活動は重要であるとすると、彼らの音読活動と日本の音読活動に何か違いがあるか、授業活動はどうか、どのような点を教師からほめられるのか、など、比較してみるのも面白いですね。ぜひそのあたりから深く考えてみてください。

中国はたいへん興味深い国です。私も興味を持っています。授業も見ました。カリキュラム調査もしました。教科書も調査しました。スケールが大きいです。少し調べたくらいでは中国は分かりません。中国とは政治的にはあまりうまく行っていませんが、K4くんのように若い人たちが仲良くすることはとてもよいと思います。もっともっと交流して仲良くしましょう。

7 Tくんの英語学習はどう教えられているかについて

Tくんは、学習者の視点から英語がどう教えられているかについて考えました。教師の授業の工夫は、生徒との対話にあると言いました。また、生徒にどのように配慮し、分かりやすく教えているかがカギとなるということらしいです。おそらくそれはほぼ正しいと思いますが、では具体的にどのように生徒と対話し、どのような配慮があり、どのようにすれば分かりやすくなるのか、などということがポイントになるようです。いずれにしても、教師の人間性が重要なファクターとなるが、画一的な人間性を育成しても、教育はうまくいかないかもしれません。

受験、教科書、教師などなど、生徒の英語学習に与える影響は多々あります。教師はそれをオーガナイズするので、おそらく最も重要な役割をせざるを得ないでしょう。Tくんはいろいろと考えていることがあり、教えることには関心を持っているようだ。ぜひ様々なことに関心を持って研究してもらいたいと思う。言語教師認知的な観点から言えば、Tくん自身の教えることの探求による、考え方の変容が興味深い。本を読んだり、人と話したり、授業を見たりすることで、何かが変わるか、あるいは、まったく変わらないか、など、言語教員養成や研修に対するヒントが得られるだろう。

Tくんが調べようとしていることは、少し漠然としていますが、とても大事な点を指摘しています。外国語教育は世界中で重視されている教育です。それも多言語が推進されています。日本の事情だけで考えていると、ガラパゴス化が目に見えてきます。母語が重要なことは世界中どこでもそうです。が、母語は一つとは限らないわけです。日本語か英語かというような論議は不毛な気が個人的にはします。また、英語だけの外国語学習も問題です。受験やテストの点数だけの英語教育も問題です。さらに、教育のすべての責任を教師にばかり押し付けるのも問題です。これらのことをTくんがどう考えるのか期待したいと思います。

5人の方、ありがとうございます。

一つ断っておきます。誤字脱字などについてはご容赦ください。見直さずにざっと感想を述べています。私の誤解もあると思いますが、重大な間違いありましたらご指摘ください。

毎回、楽しく聞かせてもらっていますが、5人だと時間が短くてすみません。発表できない部分はレポートでお願いします。レポートは枚数制限はありません。









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