2013年5月11日土曜日

ことば(主に英語)はどう教えられているか?2

授業では、多くの質問が出て、まとまりに欠けてしまいました。が、「英語を教える」ということを考えると、それだけ複雑であり、そう簡単に整理できないということです。

みなさんの個人的な体験としての「教える」という意味はひとり一人違います。「学ぶ」もそうです。

「英語を教える」ということは、

語彙、文法、発音などの言語知識
読む、聞く、話す、書くなどのいわゆる言語技能
実際の運用に関わる社会文化の知識とコミュニケーション能力
その他の背景的知識

などを、学習者が「学ぶ」ために、何をどのように工夫して提示するかということです。

「教える」ことを科学的に探求するということは、自然科学の枠組みでは限りがあります。また、心理学でも限りがあります。社会学、教育学、哲学などの枠組みでも、うまく整理できません。結局、「教える」ということは、

教える実践を通して理解する

ということに集約される傾向にあります。

ということは、どう教えられているのかを知らなければ、どう教えるかも分かりません。その際に大切なことは、自分の「教える」体験や観点が大きく自分の教え方に影響を与えているということを認識する必要があります。

先週と今週の2回、私はそのことを、みなさんに考えてほしかったのですが、伝わったかどうかは分かりません。とりあえず何か「腑に落ちる」ことがあれば、互いに共有しましょう。

授業で、社会認知(social cognition)の考えのことを話ました。整理すると、


  ・人は意図的に環境に影響を与える
  ・人は認識を返す
  ・社会的認知は自己とかかわる
  ・社会的刺激は認知の対象となることで変化する
  ・人の特性はそれ自体を考えるのになくてはならない観察不可能な属性である
  ・人は、モノが通常変化するよりも時間や環境とともに変わりやすい
  ・人についての認知の正確さはモノについての正確さよりも確認するのがむずかしい
  ・人は不可避的に複雑である。
  ・社会的認知は自律的に社会的説明とかかわる

ということでした。この考え方を基盤とすると、「教える」ことを考えるときには、一人で考えるよりは、社会的な関係の中で考えるほうがよいと、私は思います。


Lee Shulman (1987)というアメリカの教育学者は、教師が身につける知識について次のようにまとめています。

内容に関する知識(content knowledge)
総合的な教えることに関する知識(general pedagogical knowledge)
教材なども含めたカリキュラムに関する知識(curriculum knowledge)
内容を教えることに関する知識(pedagogical content knowledge)
学習者に関する知識(knowledge of learners)
教育状況に関する知識(knowledge of educational contexts)
教育目的に関する知識(knowledge of educational ends)


指導案はあくまでも案です。実際に何をどう教えるかということが大切です。そのためには、上記の知識について留意して、案を作成し、授業を実践することが大切となります。
案をどのように授業に反映させるかが、言語教師認知のポイントです。教師が何をどう捉えて、何をどう考え、何をどう実践するか、案をかたちにするのは教師の考え次第です。

次回はその「教える」ことの知識を歴史的な経緯から考え、英語はどう学ばれてきたのかを考えましょう。次のウェブサイトを参考に「ことばを教える、学ぶ」ことについてみなさんはどのくらいの知識がありますか?

Glossary for ESL/EFL Teaching

補足:前回見ることができなかったボスニア・ヘルツェゴビナの授業のビデオですが、原因は分かりません。直接のリンクサイトを提示しておきます。

Research Lesson 1

Research Lesson 2

Collaborative Lesson Study Network


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