2013年5月24日金曜日

国語、日本語、英語はすべて言語

暑くなりました。教育実習に行っている人もたいへんでしょう。また、授業がたくさんある人もたいへんでしょう。

それでも、たくさんのことを考え、学び、課題を処理しなければいけません。みなさんの意欲に期待しましょう。

さて、今週は、次のことを考えました。

日本の国語教育の目標は何でしょうか?

小学校学習指導要領1
小学校学習指導要領2
中学校学習指導要領1
中学校学習指導要領2

外国語としての日本語教育の目標は何でしょうか?

JF日本語教育スタンダード

英語教育の目標は何でしょうか?

小学校学習指導要領1
小学校学習指導要領2
中学校学習指導要領1
中学校学習指導要領2

学習指導要領は、学校あるいは教師を対象とした内容です。学習者を対象としていません。何を言っているのかピンとこない人もいるでしょうが、ここには、

「教える」

という考え方が底流にあります。学習指導要領自体がそれを目的にしているわけですからそれ自体が悪い訳ではありません。しかし、学習者の国語や英語を学ぶ目的や目標は一体何なのでしょうか?個人で考えることでしょうか?それとも入試でしょうか?

日本語教育は当然個人を対象にしていますから、JF日本語教育スタンダードは個人の到達度目標を具体的に示しています。それを教師は利用するという考え方です。

高校教育の実態を踏まえて文部科学省は次のような指導事例を紹介しています。

言語活動の充実

授業改善のイメージ

個人的には、よい考え方だと思います。熱心な教師はこのような活動をしているのではないでしょうか?できないとしたら別の理由です。受験システム、クラスサイズ、教師の複合的な仕事内容、施設設備などなど。高校の授業はただ授業を聞いて、ノートを取って、暗記して、試験を受ける、というようなイメージがあるのでしょうか?

それはさておき、国際バカロレア=IB(International Baccalaureate)という言葉を耳にすることが多くなりました。日本の学校も認定を受ける学校が増えています。次の使命に基づいた教育を行う学校です。


The International Baccalaureate aims to develop inquiring, knowledgeable and caring young people who help to create a better and more peaceful world through intercultural understanding and respect.

To this end the organization works with schools, governments and international organizations to develop challenging programmes of international education and rigorous assessment.

These programmes encourage students across the world to become active, compassionate and lifelong learners who understand that other people, with their differences, can also be right.


詳しくは、

The International Baccalaureate® (IB) 

言語の面からすると、実態としては、英語が主要な言語となっていますが、一応多言語を基本としています。

このような教育は、個人的には好きです。が、IBに無理にこだわる必要もないと考えます。

「学び」が中心となる教育

これを目標にすると、言語教育は、国語、英語と分けて考えるよりも、言語という括りで把握することがまず基本ではないでしょうか?

そのようなことを話題として議論したかったのですが、。。。。

次回は、ヨーロッパ言語を中心に多言語を考えましょう。

時間があれば、

The CEFR (Common European Framework of Reference for Languages)

について予習しておいてください。











2013年5月19日日曜日

外国語(英語)はどう学ばれているか


さて、言語教師認知の概略をこれまでざっと見てきました。

外国語(英語)指導法はこれまでたくさん提示されてきました。さらっと指導法や指導技術をおさらいしました。それぞれの指導は、ある面では効果的ですが、絶対的なものはないようです。

歴史的には、

文法訳読法(grammar translation method) 
直接指導法(direct method)

が主流です。

そこに、音声を重視した行動主義に根ざした指導法や認知学習に根ざした指導法や心理学に根ざした指導法など、科学的なアプローチが台頭して様々な言語指導が展開されてきました。現在は、コミュニケーションを重視した指導法(communicative language teaching)が一般的ですが、実践は様々です。言語学が発展し、言語教育や言語学習も、英語を中心として、さかんに研究され実践されるようになりました。

母語の習得や学習、第2言語の習得や学習など多くの研究により、また、言語教育環境も大きく発展してきました。進歩したと言えば進歩したと言えるでしょう。しかし、個人的な言語教育経験と較べた場合はどうでしょうか?

言語指導法の理論と実践
個人の言語学習体験
個人の言語教育体験

などを総合してみると、「言語教師認知」が目指すことが見えてきます。つまり、言語教師認知は、

言語教師は、言語を学び教える上で、何を考え、どのような知識があり、何を信じ、何をどのように教えているのか

を探求するということです。

なぜ、それが必要かというと、いままでの言語教育では、それが見逃されてきたからです。多くの人が気づいていながら、どうしてよいか分からない、複雑な要素としての教師はあまり研究されて来なかったのです。言語教師認知の研究はそこに焦点を当てています。

この言語教師認知のメカニズムがもう少しうまく整理されれば、

教員養成も研修も変わるでしょう。また、言語指導や言語学習も変わります。

さて、6月からはみなさんの探求です。楽しみにしています。

その前にまだ少し考える時間がありますので、次回の授業は、

7.ことばの教え方を調べる(1)国語と英語はどう違うか?

について考えましょう。

みなさんに宿題です。次の3つについて考えておいてください。

日本の国語教育の目標は何でしょうか?
小学校学習指導要領1
小学校学習指導要領2
中学校学習指導要領1
中学校学習指導要領2

外国語としての日本語教育の目標は何でしょうか?
JF日本語教育スタンダード

英語教育の目標は何でしょうか?


2013年5月11日土曜日

ことば(主に英語)はどう教えられているか?2

授業では、多くの質問が出て、まとまりに欠けてしまいました。が、「英語を教える」ということを考えると、それだけ複雑であり、そう簡単に整理できないということです。

みなさんの個人的な体験としての「教える」という意味はひとり一人違います。「学ぶ」もそうです。

「英語を教える」ということは、

語彙、文法、発音などの言語知識
読む、聞く、話す、書くなどのいわゆる言語技能
実際の運用に関わる社会文化の知識とコミュニケーション能力
その他の背景的知識

などを、学習者が「学ぶ」ために、何をどのように工夫して提示するかということです。

「教える」ことを科学的に探求するということは、自然科学の枠組みでは限りがあります。また、心理学でも限りがあります。社会学、教育学、哲学などの枠組みでも、うまく整理できません。結局、「教える」ということは、

教える実践を通して理解する

ということに集約される傾向にあります。

ということは、どう教えられているのかを知らなければ、どう教えるかも分かりません。その際に大切なことは、自分の「教える」体験や観点が大きく自分の教え方に影響を与えているということを認識する必要があります。

先週と今週の2回、私はそのことを、みなさんに考えてほしかったのですが、伝わったかどうかは分かりません。とりあえず何か「腑に落ちる」ことがあれば、互いに共有しましょう。

授業で、社会認知(social cognition)の考えのことを話ました。整理すると、


  ・人は意図的に環境に影響を与える
  ・人は認識を返す
  ・社会的認知は自己とかかわる
  ・社会的刺激は認知の対象となることで変化する
  ・人の特性はそれ自体を考えるのになくてはならない観察不可能な属性である
  ・人は、モノが通常変化するよりも時間や環境とともに変わりやすい
  ・人についての認知の正確さはモノについての正確さよりも確認するのがむずかしい
  ・人は不可避的に複雑である。
  ・社会的認知は自律的に社会的説明とかかわる

ということでした。この考え方を基盤とすると、「教える」ことを考えるときには、一人で考えるよりは、社会的な関係の中で考えるほうがよいと、私は思います。


Lee Shulman (1987)というアメリカの教育学者は、教師が身につける知識について次のようにまとめています。

内容に関する知識(content knowledge)
総合的な教えることに関する知識(general pedagogical knowledge)
教材なども含めたカリキュラムに関する知識(curriculum knowledge)
内容を教えることに関する知識(pedagogical content knowledge)
学習者に関する知識(knowledge of learners)
教育状況に関する知識(knowledge of educational contexts)
教育目的に関する知識(knowledge of educational ends)


指導案はあくまでも案です。実際に何をどう教えるかということが大切です。そのためには、上記の知識について留意して、案を作成し、授業を実践することが大切となります。
案をどのように授業に反映させるかが、言語教師認知のポイントです。教師が何をどう捉えて、何をどう考え、何をどう実践するか、案をかたちにするのは教師の考え次第です。

次回はその「教える」ことの知識を歴史的な経緯から考え、英語はどう学ばれてきたのかを考えましょう。次のウェブサイトを参考に「ことばを教える、学ぶ」ことについてみなさんはどのくらいの知識がありますか?

Glossary for ESL/EFL Teaching

補足:前回見ることができなかったボスニア・ヘルツェゴビナの授業のビデオですが、原因は分かりません。直接のリンクサイトを提示しておきます。

Research Lesson 1

Research Lesson 2

Collaborative Lesson Study Network


2013年5月5日日曜日

ことば(主に英語)はどう教えられているか?1

ことば(主に英語)はどう教えられているか?

様々な話題が出ました。「英語(ことば)はどう教えられているか」という問いに対する答えは、

1 自分の体験
2 本に書いてある知識
3 だれかからの知識か経験

などから導き出されるでしょう。しかし、実態はよく分かっていないのが現状です。

CLT (Communicative Language Teaching)は、1980年代から盛んになり、おそらくほとんどの外国語学習では基本となっている指導法の考え方です。ところが、CLTというのは考え方であり、具体的にこのように教えるということははっきりしません。たとえば、日本の学習指導要領は、コミュニケーション重視です。いわばCLTの考えが基盤にありますが、文法シラバスが根底にあり、機能(function)や意味(notion) をうまく提示できていません。実際、教科書は文法シラバスです。また、語彙制限もかけています。語彙に制限をかけるとどうしても本物のコミュニケーション(authenticity)はないがしろにされます。

多くの小学校の外国語活動や、中学校や高校の英語授業では、教科書(小学校では英語ノート)があり、それに忠実に教えています。1学期は、教科書のレッスンをここまで教え、テスト範囲を定め、テストをして、成績を出す、という展開が日々行われています。高校進学や大学進学という目標があれば、それを目的にして授業展開もなされます。そういう目的がはっきりない場合は、果たして何のために英語を勉強するのか?

授業中の話し合いの中で、たくさんの話題が出ました。私はその話題のどれがよくて、どれば悪いか、という判断はできません。ただ、おもしろいなと思って聞いていました。いろいろな観点があるということです。あっと言う間に時間が過ぎて、発表できなかったグループがあり申し訳有りませんでしたが、文法、読解、ネティブスピーカー、オーラルコミュニケーションなどなど、どれをとっても探求できる話題です。

たとえば、教師がネイティブスピーカーについてどのようなTeacher Cognitionを抱いているのか?「英語だけで授業をされても何を言っているのか分からない」「発音や表現はネイティブスピーカーにが教える」などなど。

また、話を聞いていて、日本で英語を教えられた人には、共通の英語授業に対する思い込みがあるように思いました。たとえば、「文法は日本語でしっかりと他の活動とは別に教えられるべきだ」など。

英語はどう教えられているか

という問いは、あまり考えることはないかもしれませんが、考えることは大切です。

英語の教師になって、あるいは、実際にことばを教えている人は、「どう教えているのか」あるいは「何を教えているのか」について、人と話し合うことで気づくことがあります。それが重要だと思います。

アクション・リサーチ(action research)では、問題解決型の展開で、根本的なことを見失う可能性があります。リフレクション(reflection)は重要だと言われ、授業をした後に反省をすることが推奨されます。しかし、それも短絡的な解決を求めがちです。

「教える」ことは、もっと深く考えることから始めましょう。

次回は、この続きを考えましょう。

英語ネットにある指導案と実際の授業について焦点をあてましょう。

指導案(lesson plan)はどうあるべきか?
指導案に見られる問題点や改善点は何か?
指導案と実際の授業はどう違うか?

などについて考えましょう。