2011年6月15日水曜日

言語教師認知研究のリサーチ方法

言語教師認知研究のリサーチ方法について前回話しました。

アンケート、インタビュー、観察、日誌などなど、様々な方法があります。

このような調査で得られるデータは、調査対象者の自己申告と調査者の主観的な解釈によって分析されます。調査を実施するときに、この点を忘れると危険です。要するに、得られるデータはいかようにも解釈できる可能性があります。

アンケートは、よく行なわれる調査です。構造を明確にして、ある程度の量を取れば、そのことに関する傾向は分かるので、目的が明確で、調査したいことが限られているならば有効でしょう。しかし、深層にある考えや本音や原因などを探求するには限界があります。因子分析なども行なわれますが、あくまでも推測の域を出ません。

また、アンケートの項目数を多くしたり、複雑にすることで、回答者が気持ちよく回答してくれない危険性があります。分析の際には注意する必要があるでしょう。

それでも、アンケートは最も簡便で有効な調査であり、定量的に分析が可能です。実施する場合は、すでに行なわれているアンケートを十分に参考にして、予備調査を実施してから、回答項目をしぼって実施するとよいでしょう。

インタビューも、簡便な方法ですが、ある程度聞き取り側の経験が重要です。構造的なインタビューであれば、客観性は保たれるかもしれませんが、アンケートとあまり変わらない結果となるでしょう。ある程度、介入的なインタビューも必要です。ある質問に関連して、深く質問するといったことも必要です。

分析にあたっては、録音しておくことが原則です。これには、相手の同意を得て行なう必要があります。録音の意図は、インタビューしているときには、聞き逃してしまうことも多いことと、それを文字にすることによって、異なった視点で分析ができることです。文字にしない場合でも、何度か聞き返すことで、気づくことがあります。また、第3者に聞いてもらうことにより、さらに妥当性を高めることも可能でしょう。

観察は、様々な観察方法が可能ですが、アンケートやインタビューで言われていることが実際の行動ではどのようになっているかを調査者の視点から見ることが大切です。また、観察は、教師のビリーフや信念がどのように構成されているのかを見る貴重な資料です。アンケートもインタビューもその他のデータも結局自己申告に過ぎません。実際にはどのようなかたちで行動に現れているかを検証することは重要です。

このような調査を実施するときに、いわゆる、データや分析の信頼性や妥当性を高めるために、工夫が必要です。大切な点は、調査者のある面で主観的な調査結果について、多くの人が納得してくれるかどうかです。これは従来の統計手法ではかなりむずかしいことです。

さて、言語教師認知の調査には、かなりむずかしい課題が山積みですが、第一に、調査者がおさえておかなくてはいけない点は、ある問題を探求する知的好奇心、つまり、動機をしっかりと持つことです。教師を単に調査対象とだけ見ていては教師認知の調査はうまくいかないでしょう。授業を良くする、教師の力量を高めるなどの、なんらかのメリットが、教師認知研究にはつねに必要です。

それは、ある面では、リフレクションにつながり、アクションリサーチにつながります。ひいては、教師リサーチ全体の大きな課題の解決につながると考えています。

話がまとまりませんが、来週からのみなさんの発表に期待します。

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